第182回 株式会社 フューセス

 第182回は、今年で創業20年を迎える電気通信工事の『株式会社フューセス』さんをご紹介します。平成17年、久御山で現社長の父・永山哲男氏が創業しました。長年電気通信の会社に勤め55歳で独立。独立時には元の会社から26名ほどの仲間が共に新たな道を歩み出し、協力会社を含めると200名近い人々に支えられての船出でした。しかし実際には、知り合いの会社から車を数台借りて始めるような状況で、当初は資金繰りに苦労された時期もあったといいます。
 現社長は26歳の時、父の独立を機に兄とともに会社へ加わりました。それまで全く異なる業種で働いていたため、最初の5年間は職人と同じ現場に立ち、一から技術を習得しました。その努力を重ねる中で会社は成長を続け、その後は再び右肩上がりに業績を伸ばし、現在に至ります。
 社長が目指すのは「会社を大きくすること」ではなく「従業員が気持ちよく働ける環境づくり」です。業界としては珍しく若い人材が多く集まり、従業員の平均年齢は30代半頃。地方から18歳で親元を離れて就職する社員も多く、同社では総務が“お母さん的存在”として小さな愚痴や不満も受け止め、必要があれば役員に改善を提案します。現場からの意見はスピーディーに取り入れ、熱中症対策のタブレットや飲料の要望にも迅速に応えてきました。その結果「もうこれ以上要望がない」と言われるほど、従業員との意思疎通が図れています。
 さらに社長は「自分たちの仕事が何のためになるのか」を若い社員が実感できるよう配慮しています。石川県の被災地での復旧工事や、過疎化が進む山村での通信整備に携わり、「これでインターネットが使える、ありがとう」と感謝される経験を重ねることで、人や地域の役に立つ誇りを共有しています。
 従業員とのコミュニケーションも大切にしており、朝礼前の雑談や年3回の懇親会を通じて、京都本社と滋賀営業所の社員が顔を合わせられる機会を設けています。社長自身、学生時代に野球を経験し、昨年は少年野球の監督を務めた経験もあり、その中で学んだ「根気強く伝え、本人が理解して動けるように導く姿勢」は現在の社員教育・育成にも生かされています。
 株式会社フューセスは、技術力の向上と人を大切にする経営哲学の両立により、今後も持続的な成長を目指していかれるでしょう。