第179回 株式会社 新生工業
第179回は今年で創業55年を迎える金属加工の『株式会社 新生工業』をご紹介します。同社は1970年に現社長のお父様によって創業されました。京都市の九条河原町で銭湯を営んでいた際、燃料が薪から重油に切り替わったことで空いた薪置き場を有効活用したことが始まりです。「鉄をプレス加工する仕事をしないか」という提案を受け、小さなスペースから金属加工業への第一歩を踏み出しました。
1975年には事業拡大に伴い宇治市伊勢田に移転し、本格的な製造業としての基盤を築きました。この時期、近隣に立地していた大手上場企業から「ゲーム機の部品を作ってほしい」という依頼を受けたことが、同社の運命を大きく変えることになります。当時のゲーム業界は黎明期にあり、この先見性ある取引開始が後の飛躍的成長の礎となりました。取引は徐々に拡大し、特にファミリーコンピュータの電波を遮断するシールドケースの製造を手がけるようになると、事業は大きく発展しました。この成功を機に、同社は精密板金加工技術を核とした総合的な金属加工メーカーとして地位を確立していきます。
現在の主力事業は、ロボット部品、センサー部品、ゲーム機部品、各種検査機器部品など多岐にわたります。特に半導体製造装置部品やFA機器部品の分野では、最先端の加工技術を駆使し、高精度な製品を提供しています。同社の技術力は、パンチ・レーザー複合機や各種ベンダーなどの最新設備によって支えられており、ステンレス、鉄、アルミなど多様な素材への対応が可能です。
品質管理体制も徹底しており、2002年にISO9001の認証を取得しています。取引先大手企業から「ベストパートナー賞」を受賞、同社では10年以上にわたり、大手企業の新入社員研修を実施しておられます。同社のモットーである【納期を守る】【品質重視】【清潔な会社】がしっかりと実施されている信頼の証です。
現在、全国的に製造業は深刻な課題に直面しています。後継者不足、採用難、そして有能な技術者の海外流出という三重苦が業界全体を悩ませています。現社長はこれらの問題を「何とか解決したい」と日々考えており、持続可能な製造業の発展に向けた取り組みを模索しています。
同社は「100年先を見据えた新生創造」をビジョンとして掲げ、長期的な視点で事業展開を図っています。これからも技術と誠実さで社会に貢献し続けることでしょう。