第180回 岸紙工 株式会社

 第180回は今年で創業107年を迎える段ボール箱製造業の『岸紙工株式会社』をご紹介します。
大正7年(1918年)、京都市東山区で現社長の曽祖父・岸喜三郎さんによって、貼箱製造業を創業されました。その後幅広い事業を展開しつつ「岸喜三郎商店」として基盤を築きます。大きな転機となったのは太平洋戦争の最中、国の要請で同業5社を合併し医薬品包装紙器指定工場に認定され、段ボールケースの製造を始めたことが今の主力事業のきっかけとなりました。戦後の復興期から高度経済成長期にかけて事業は順調に拡大し、平成3年には現在の宇治田原町に拠点を移転。最新設備と安定した生産体制を整え、今の企業基盤を築きました。
 段ボールは、環境にも優しい素材で日本国内での回収率は95%以上と世界でもトップクラスです。これは、家庭や企業での丁寧な分別、古紙回収・製紙・段ボール業界の連携による「三位一体」のリサイクルシステムによって支えられています。原材料のほとんどを国内で調達できるのも大きな強みです。同社は品質管理にも力を入れており、2005年にはISO9001認定を取得。以後品質管理の徹底と、お客様満足度向上に取組んでいます。
 今年5月末、創業家5代目となる岸裕也さんが新社長に就任。現在まで税理士として自身の税理士事務所を運営し、企業や個人の経営支援に携わってこられました。このたび実家の後継者として家業を継ぎ、これまで培った専門知識と経験を活かし、財務面からも経営の安定化と成長を目標とされています。小学生の頃から祖父母について工場に行き、手伝いをするなど、家業については幼少期から経験もあり知識も培ってこられました。この豊富な経験と専門知識が、今後の経営戦略に新たな視点をもたらすことでしょう。
 会社のビジョンは「変革」と「行動」。取材の際に社長がお話しされていた「川の真ん中に留まるには、上流に向かって泳ぎ続ける必要がある」という言葉がとても印象的で、【小ロット】【短納期】を重視し、お客様の意見を大切にされていると感じました。また訪問時の従業員の皆様のあいさつ等、礼儀作法が本当に徹底されていることもとても印象的でした。107年の歴史を大切にこれから110年120年と続く企業だと実感しました。