第192回 株式会社 嵯峨映画

 第192回は京都太秦で映画などの照明をされている株式会社嵯峨映画さんです。会社の始まりは1925年にさかのぼります。創業者の古市良三氏は、当時人気を集めた俳優・阪東妻三郎が京都に撮影所を構える際、電気工として招聘されました。以後、映画の照明技師として経験を積み、1952年に照明を専門とする会社として独立します。以来、映画からテレビ、CMへと、映像制作の広がりに合わせて活動の場を広げてきました。
 主力は、撮影現場での照明業務です。作品の世界観や時間帯の設定に合わせて光を設計し、機材の設置や操作まで担います。照明スタッフの派遣、照明プランニング、機材のレンタルと販売も手がけます。近年はLED照明への置き換えが進み、機材の軽量化も進みました。ただし、どこにどう光を当てるかの判断は、今も人の経験に頼ります。現場を統括する照明技師として個人差はありますが5年以上かかるとされます。
 2017年7月、古市晶子氏が代表取締役社長に就任しました。前社長・古市義人氏の妻で、結婚以来長く仕事を手伝い、従業員とも打ち解けた関係を築いてきたため、大きな違和感なく事業を引き継げたといいます。就任後に力を入れたのが、休暇を取りやすい職場づくりです。撮影現場の仕事は、今も早朝や深夜に及ぶことがあります。「休みたい時くらいは、できる限り休ませてあげたい」。現場の予定を調整し、希望する日に休めるよう配慮しています。機材の軽量化に伴い女性スタッフも増え東京支社では7名もの女性が活躍しています。
 近年は営業部門を立ち上げ、LED照明機器の販売や機材レンタルにも力を入れています。撮影現場で培った知識を生かし、用途や条件に合った機材を提案できることが強みです。撮影の手法が変わっても、現場で光をどう当てるかを決めるのは人であり、ライティング感覚が特に大切です。AIの活用が広がっても置き換えは難しく、人材の確保と育成がこれまで以上に重要になります。
 「会社にとって一番の宝は、働いてくれている社員たちなんです」そう語る社長の目もとは、まるでわが子の話をする親のようにやわらかく温かい表情だったのが印象的でした。